2025/3/31
開業する際、多くの経営者が資金についての悩みを抱えます。どれ位の資金を用意するべきなのか、融資を受けられるのかなど、開業に向けたお金の悩みは付き物です。
この記事では、業種別に開業に必要な資金や創業融資を受けるために用意しておくべき自己資金の目安などを分かりやすく紹介します。飲食業、建設業、介護サービス業、情報サービス業などで開業を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
開業する際、個人事業主として開業するのであれば開業届を出せば無料で開業が可能です。
しかし、法人として株式会社や合同会社として設立する場合、約11~24万円ほどの法人設立費用が必要となります。
また、開業にあたって店舗や設備、従業員の人件費などを加えると、創業時に必要となる資金はどんどん膨らんでいくことでしょう。
開業に必要とされる資金を全て自己資金で用意できるのであれば理想的と言えます。しかし、開業にはタイミングも重要です。設立のための自己資金を貯めている間に、好機を逃してしまうのは得策とは言えません。
そんな時には、以下の方法で開業資金を調達することができます。
・貯金してきた資金を開業資金に充てる
・前職の退職金を開業資金に充てる
・親族や支援者から贈与によって得た資金を開業資金に充てる
・創業融資を受ける
一般的な金融機関などから融資を受けるのが難しい創業時でも、金利を抑えて融資を受けられる日本政策金融公庫の創業者向け融資などを利用する人も少なくありません。
2024年に日本政策金融公庫が全職種を対象として行った新規開業実態調査によると、4割以上が500万円未満で開業しており、小規模開業が増加傾向にあります。
一方、6割以上は500万円以上の開業資金を必要とし、うち2割程は1,000万円以上の資金がかかっています。同調査で行われた資金調達額に関するアンケートでは、2024年に開業した事業者が資金調達した金額の平均は1,197万円という結果がでています。
うち、65.2%は金融機関等から借り入れをして資金を調達していることが分かっており、金融機関等からの借り入れで調達した資金の平均は780万円、自己資金の平均は293万円でした。
創業融資制度は広く利用されており、特に初期費用として多額の資金を必要とする業種においては積極的に検討すべき方法と言えます。
創業融資を受ける要件にはさまざまなものがありますが、自己資金に関する要件は多くの場合含まれていません。つまり、自己資金が0でも創業融資の申し込みは可能です。
しかし、申し込みをしたからといって誰でも融資を受けられる訳ではありません。厳正な審査を経て、融資に値すると判断された場合にのみ融資が受けられます。
そこで重要なのが自己資金です。自己資金の要件は定められていないにも関わらず、審査の際には自己資金の金額によって評価が大きく変わり、一般的に自己資金が多ければ多いほど審査は通りやすいと言われているのです。
金融機関は、融資した資金が適切かつ計画的に使用され、利子を含めて返還されなければ自社に不利益が生じてしまうため、厳正な審査を行って融資先を決定する必要があります。
自己資金は、経営者がどれほど計画的に準備をして開業するつもりなのかを判断する重要な指針となります。少なくとも、開業に必要な資金の3分の1を自己資金として用意するのが望ましいと考えられており、融資審査におけるボーダーラインと捉えることもできるでしょう。
開業資金として必要な金額は業種によって大きく異なります。そのため、開業予定の業種に合わせた資金の算定が求められ、準備できる限りの自己資金を用意しておくことが重要です。
飲食業の開業に必要な資金は一般的に800~1,000万円と言われています。もちろん、店舗の立地や広さ、設備、人件費などによって異なりますが、1,000万円ほどを目安と考えるのがよいでしょう。
創業融資を希望するのであれば、240~300万円を自己資金として用意しておくのが望ましいです。
建設業の開業に必要な資金は一般的に500~1,000万円と言われています。開業したばかりの頃は、1人でさまざまな業務を担う「1人親方」として事業を行うケースが多いです。人件費を抑えることができ、ある程度事業が軌道に乗ってから従業員を雇用するなど、状況に応じて経営していくことが可能です。また、事務所を自宅として使用し、初期費用を抑えるケースも多く見られます。
一方で、中~大規模な依頼を受注するためには事務所の設置や従業員の確保も必要です。また、法人として創業するのであれば建設業許可を取得する必要もあり、その分開業費用も多く必要になっていくでしょう。
創業融資を希望するのであれば、150~300万円の自己資金を用意しておくのが望ましいです。
介護サービス業の開業に必要な資金は一般的に200~1,200万円と言われています。
事務所や設備を必要としない訪問介護サービスであれば開業費用は抑えられますし、老人ホームなどをはじめとする大規模な施設が必要な場合は費用も比例して多く必要になるでしょう。
また、介護報酬制度では、サービスを提供した2ヶ月後から報酬が支払われる仕組みになっているため、創業から2ヶ月間は基本的に収入がないとみたほうがよいです。その間の人件費なども開業費用に含める必要があるため、従業員が多いほど費用が多く必要とされます。
創業融資を希望するのであれば、60~360万円の自己資金を用意しておくのが望ましいです。
情報サービス業の開業に必要な資金は200~500万円と言われています。コンピューター機器などの設備費用が必要なこと以外は、大きく資金を必要とするケースが少ないため、比較的費用を抑えて開業できる業種と言えるでしょう。
基本的に1人で開業するケースが多く、自宅をオフィスにする割合も高いのが特徴です。
創業融資を希望するのであれば、60~150万円の自己資金を用意しておくのが望ましいでしょう。
近年、インターネット上の広告などで自己資金0円での開業を謳っているケースが見受けられますが、法律的に可能だとしても現実的には非常に難しいケースであることを理解しておくのがよいでしょう。
日本政策金融公庫などが提供している創業融資は、厳正な審査が行われる代わりに創業者にとって良い条件で融資を受けられるのが特徴です。一般的な金融機関と比較すると、返済期間の条件が緩く金利も低く設定されています。
一方で、自己資金0円でも融資可能と謳う金融機関の場合、返済期間が短かったり創業当時だけ金利が安く後々金利が上がるよう契約に盛り込まれているケースも少なくありません。
また、運よく好条件で融資を受けられた場合、経営が軌道に乗るまで収入は安定し難いことが予想されます。その間の生活費などを捻出するのが難しく、Wワークなどで補填するも経営に支障をきたしてしまう人が少なくありません。
自己資金0で創業できた人に話を聞くと、これまでにないビジネスアイデアを思い付いた人や生活費における負担を配偶者や親族が補填してくれているといった非常に珍しいケースがほとんどです。
融資審査では、融資する企業がこの先成功するのか、融資した費用を適正な期間内に利子も含めて返済して貰るのかどうかを評価しています。
特に、開業時においては過去のデータがない分、計画性についての審査が厳しくなるでしょう。
計画性なく開業した会社が数年で廃業してしまうケースは多くあります。会社を設立するまでに、どのような計画を立て、準備しているのかを確認することで、金融機関は信頼できる融資先なのかどうかを判断するのです。
このような審査において自己資金は、どのように計画を立てて資金を集めて来たのかを確認する重要な事項です。突発的な思い付きで開業を決めた訳ではなく、創業後の経営を軌道に乗せるために計画的に自己資金を溜めて準備をしてきたことが分かれば、金融機関としても安心して融資しやすくなるでしょう。
創業融資はただでさえ評価対象が少ないため、自己資金の額においても審査における重要な評価対象となります。
創業融資を受けるために自己資金を確保したものの、審査の際に評価対象として認められなかったというケースも少なくありません。融資審査の際に、自己資金として認められるお金と認められないお金が存在することも知っておいた方がよいでしょう。
融資審査の際に自己資金として認められるお金には以下のものがあります。
融資審査の申請者が名義人となっている口座に預金されている資金は自己資金として認められます。口座の形式は普通預金、定期預金、積立預金など、どのような形式でも構いません。審査の際には預金状況なども確認されるため、一度に多くのお金が預金されたものよりも、計画的に貯蓄して作った資金であることが分かる方が融資審査で良い評価を期待できます。
また、申請者の配偶者の預金も自己資金として認められますが、審査の際に自己資金として提示するためには配偶者本人の同意が必要となります。
前職を退職した際に受け取った退職金も自己資金として認められます。申請者の銀行口座などに振り込まれたものを提示するとよいでしょう。
また、源泉徴収票を提出することで、資金の出所を明確に証明できるため、自己資金としての評価を得やすくなります。
有価証券とは、財産権を表示する証券であり、株券、投資信託の受益証券、手形、小切手などがあたります。ただし、自己資金として評価を得るためにはこれらの有価証券を現金化しておく必要があるため注意してください。
これらの資金が有価証券を現金化したものであることの証明を求められるケースもあるため、必要に応じて取引詳細をはじめとした資料も用意しておきましょう。
贈与として貰い受けた資金は自己資金として認められます。しかし、現金で受け取ってしまうと資金の出所が不明になってしまうため、贈与する人の銀行口座から申請者の口座へ振込みをしてもらうなど、詳細を証明できる形式に整えておく必要があります。
また、資金について返済の義務が発生しないことを証明するため、贈与契約書などを用意しておいた方がよいでしょう。
基本的に贈与によって得た資金は自分自身で貯蓄等をして作った資金に比べて評価が低い傾向にあります。これは、他人任せの資金調達では計画性についての評価を得られないからです。
贈与による資金を自己資金として申請する際には、自分で用意した資金を上回らないようにしておいた方がよいでしょう。
融資審査の際に自己資金として認められないお金には以下のものがあります。
基本的に、借入などで得た資金は自己資金として認められません。借入などで用意した返済義務のある資金を自己資金として偽ることを「見せ金」と言います。
融資審査の際には、資金がどのようにして作られているのかをお金のプロが厳正にチェックします。見せ金はすぐにバレてしまうので、自己資金が用意できない場合には、素直にその旨を申告するのが得策です。
見せ金であることがバレてしまった際には、今後同じ金融機関からの融資は受けられないと考えておいた方がよいでしょう。
タンス預金をはじめとした現金で貯蓄してきた資金は基本的には自己資金として認められません。預金通帳などに記載がないため、見せ金かどうかの判別ができないからです。
これまで現金で開業資金を貯蓄してきたのであれば、取り敢えず銀行口座に移し、その旨を添えて伝えましょう。日記や貯金状況を記してきた書類などがあれば持参してください。評価は期待できませんが、一応提出してみるのがおすすめです。
事業を始める際には多額の資金が必要です。開業資金は簡単に作り出せるものではなく、状況に応じて創業融資を利用するのもひとつの方法です。
ただし、全ての資金を創業融資で賄うことはできません。創業するために計画的に貯蓄してきた資金を自己資金として提示することで、今後の計画性などをアピールし融資審査にて良い評価を得ることが大切です。
これから開業を考えている人は、計画的に自己資金を作り、足りない分は融資などを受け、良いスタートを切れるようにしてください。
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