2024/12/20
創業時は資金面での困難を抱えるケースが少なくありません。しかし、融資には信用が必要です。創業したばかりで信用できる業績を持たない企業や事業主が融資を受けるのは現実的ではないでしょう。
創業したばかりのスタートアップ企業にとって、比較的受けやすい融資があることをご存知ですか。創業したばかりの融資に不利な企業に向けて提供されているのが創業融資です。
この記事では、創業融資についてどのような融資なのか、種類、条件、申込方法などを詳しく紹介します。創業したばかりで事業実績や資本金が少なく、融資が受け難いことにお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
創業融資とは、起業したばかりで事業実績を持たなかったり、少ない資本金で起業したために信用を得られなかったりする企業や事業者向けに行われている融資です。
一般的な金融機関で提供している融資の場合、金融機関の定める基準に満たない企業は融資を受けられません。事業実績のない企業や資本金の少ない企業は基準を満たせず、融資審査に落ちることが多いでしょう。
そこで、スタートアップ企業を支援するために生まれたのが創業融資です。
最も有名な創業融資は日本政策金融公庫の提供しているものです。そのほかにも、自治体や一般の金融機関、信用保証協会などでも創業融資を行っていることがあります。
創業融資を行っている金融機関はそう多くありません。なかでも、特に知名度が高いのが日本政策金融公庫の創業融資です。
続いては、日本政策金融公庫の創業融資の種類を紹介していきます。
対象 | 新規事業を始める人、事業開始後おおむね7年以内の人 |
資金の利用用途 | 新規事業に関連する設備資金、もしくは運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(運転資金として4,800万円) |
返済期間 | 設備資金の場合、20年以内 運転資金の場合、10年以内 (※それぞれ、5年以内の措置期間を設ける) |
利率 | 基本利率を適用※例外あり |
日本政策金融公庫の提供している新規開業資金は創業融資の一種です。
新しく企業もしくは開業する人、もしくは事業開始後おおむね7年以内の人が利用できます。基本的な資金の使い道は、設備資金および運転資金であり、融資の最大限度額は7,200万円です。融資限度額のうち、運転資金として使用できるのは4,800万円となります。
設備資金の返済期間は20年以内、運転資金の返済期間は10年以内と定められており、それぞれに措置期間が5年以内とされています。
日本政策金融公庫では、女性や若者、シニアなど起業を支援する創業融資もあります。
内容は一般的な新規開業資金と同じですが、以下の条件に当てはまる人は特別利率で融資を受けられます。
一般的な新規開業資金の利用条件を満たし、さらに上記の条件に当てはまる場合、より低い金利で融資を受けられる可能性があります。
創業融資には中小企業向けのものもあります。内容は一般向けの新規開業資金と同じですが、以下の2つの条件を満たす場合は特別利率で融資を受けられる可能性があります。
新規開業資金よりも高額な融資を受けたい場合、挑戦支援資本強化特別貸付(資本制ローン)を利用することで、個人企業の場合は最大7,200万円、中小企業事業の場合は最大10億円の融資を受けられる可能性があります。
資本制ローンの場合、期限一括返済が適用されるため月々の支払いは金利のみです。最終回に一括で返済するため、月々の資金繰りがしやすくなるでしょう。また、業績が思わしくない場合には金利負担が下げられるなど、業績に応じて金利が変動するのも特徴のひとつです。
個人事業として挑戦支援資本強化特別貸付の融資を希望する場合、以下の条件に当てはまる人が対象となります。
返済期間は5年1ヶ月以上20年以内で設定でき、無担保・無保証人で融資を受けられる可能性があります。
融資にはさまざまなものがありますが、なかでも創業融資を選ぶメリットとして以下の3つが挙げられます。
一般的な融資審査では、事業実績が大きく影響を与えます。事業実績がない状態で融資を受けるのは非常に難しいでしょう。しかし、起業したばかりの企業の場合、業績が少ないのは当然です。
創業融資は、スタートアップ企業の支援を目的としているケースが多いため、事業実績がなくても融資を受けられる可能性があります。
一般的な融資では、信用が低いほど金利が高くなります。事業実績に関する問題をカバーして一般的な融資を受けられたとしても、高い金利が必要になるケースが多いでしょう。
一方で創業融資は、金利が低く設定されています。一般的な金融期間で融資を受けるよりも、創業融資を利用した方が金利を抑えられるのが大きなメリットのひとつです。
基本的に融資を受ける場合、担保や保証人を用意する必要があります。担保となる資産のない場合や、保証人を引き受けてくれる人がいない場合には融資を受けられないケースもあるでしょう。
公的機関で提供している創業融資の場合、無担保・無保証人で融資を受けられる可能性が高い傾向にあります。日本政策金融公庫や地方自治体などが行っている創業融資制度を確認してみてください。
創業融資を行う金融機関はそう多くありません。そのなかでも特に高い知名度を持つのが日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫には、スタートアップ企業が利用しやすい3つの特徴があります。
日本政策金融公庫では以下の条件に当てはまる場合、利率を一律0.65%引き下げられます。
さらに、雇用の拡大を図る場合は最大0.9%の利率を引き下げて融資を受けられる可能性もあります。
日本政策金融公庫ではスタートアップ企業がスムーズに融資を受けられるよう、以下の条件に当てはまる場合、原則として無担保・無保証人での融資を行っています。
担保や保証人の問題がネックとなって融資を受けられないケースでも、安心して融資審査の申込ができます。
一般的な設備資金の融資の返済期間は平均5~10年と言われています。これでも十分に長い返済期間と言えるでしょう。
しかし、日本政策金融公庫の創業融資では設備資金の返済期間が20年以内(うち5年以内は措置期間)、運転資金の返済期間は10年以内(うち5年以内は措置期間)に設定されています。
長期の返済計画を立てられることで、資金繰りなどの負担を抑えることができます。
日本政策金融公庫の創業融資を申込む際には以下の書類を用意しておくとよいでしょう。
借入申込書と創業計画書以外は任意で構いません。しかし、融資審査を受けるにあたって最低限に用意しておくべき書類と言えます。
また、融資面接時には以下の書類を用意しておくとよいでしょう。
上記の書類を用意しておくと、融資に関する相談を進めやすくなります。
続いては、日本政策金融公庫の創業融資を申請する際の流れを紹介します。創業融資の申込みを検討している方は参考にしてください。
融資申込みを行う前に融資相談を受けましょう。
日本政策金融公庫では事業資金相談ダイヤルが設置されているため、電話による融資相談も可能です。
ただし、融資は創業する場所を管轄している支店で申込みを行うので、可能な限り該当支店に足を運び、担当者に直接融資相談をしておく方が望ましいでしょう。
融資相談をして申込む融資を決め、借入申込みを行います。
融資の内容によって必要な書類が異なる場合があるため、十分確認して書類を準備しましょう。
申込書は直接支店に提出してもよいですし、郵送でも問題ありません。
申込みを行うと、日本政策金融公庫から面談の日程が書面等で通達されます。指定された日時に該当支店に足を運び、面談を受けましょう。
実地確認とは、実際に店舗や事業所などに足を運び、面談の内容と相違がないか等を確認することです。
担当者によっては面談の後に実地確認を実施するケースもあります。また、実地確認には同席を求められる場合があるため、実施の旨を伝えられた際には同席が必要か確認しておきましょう。
面談や実地確認を行った後、約1週間を目安に審査結果を通知されることが多いです。審査結果の通知は一般的に電話などで行われます。
審査に通っても、落ちても通知されます。
審査に通った場合、契約の手続きも必要なため、必要な書類や訪問する日程などを確認しておくのを忘れないようにしてください。
日本政策金融公庫の創業融資審査に通り融資を受けられる場合、契約を結ぶ際に以下の書類が必要です。
預金口座利用届は複写式のものが必要です。
面談などを行った際に連帯保証人を立てることを条件とした場合、それぞれの書類に連帯保証人の署名・実印を用いて捺印する必要があります。
また、それぞれの書類に収入印紙が必要です。融資金額に応じたものを用意して貼付けしましょう。
書類に不備がなければ、一般的には1週間前後で指定した銀行口座へ融資金が振り込まれます。
創業融資はスタートアップ企業などの支援を目的とした融資であるため、一般的な融資に比べれば審査に通りやすい傾向にあります。一方で、審査に通りやすいからといって適当な対応をしてしまうと、融資審査に落ちてしまうこともあるでしょう。
最後に、これから創業融資を受けたいと考えている人が気を付けるべき注意点について解説します。
2006年に会社法が改正されて以降、資本金についての条件が撤廃され1円の資本金で会社が設立できるようになりました。このことから、資本金をほとんど用意せずに起業する人も増えています。
しかし、融資において資本金は信用を計る重要な指標のひとつになります。なかには、借入をして一時的に資本金を増やし、融資審査に有利に働くように仕向けたいと考える人もいるでしょう。
一時的に借入した資金で資本金を増やして見せることを「見せ金」と呼びます。
融資担当者はお金のプロです。見せ金かどうかを見抜く目を持っています。提示した資本金が見せ金であることがばれると、信頼関係は構築できず融資審査に落ちてしまう可能性が高いです。
場合によっては、公正証書原本不実記載等罪に問われる可能性もあります。
創業融資の場合、自己資産がなくても融資を受けられる場合が少なくありません。資本金が少ない場合も、正直に現状を伝えて融資担当者との信頼関係構築に勤めましょう。
融資審査を受ける際には、創業計画書を作成します。
インターネットなどで作成方法を調べていると、例として記入された数値なども見られます。しかし、これらの情報をそのまま丸写ししてしまうと創業計画書を作成する意味がありません。
創業計画書は、自社がどのような事業でどのような方針を持って事業をすすめていくのかを記載する書類です。融資審査を行う金融機関や担当者にとっては、融資先が実現可能な事業計画を持っているのかを見極めるための大切な書類でもあります。
創業の動機や経営者の略歴、取り扱う商品やサービス、取引先など、融資審査に必要な情報をピンポイントに記載することが重要です。また、内容も緻密に記載する必要があるため、作成に自信がない場合には、税理士などプロに依頼するのもよいでしょう。
月別収支計画書は絶対に提出しなければいけない書類ではありません。しかし、任意書類として用意し、提出しておくことで融資担当者に良い印象を与えられる可能性が高いです。
月別収支計画書は、これから行う事業においてどのような収支項目があるのかを明確な根拠から算出して、月別の収支計画を記載する書類です。事業実績をもたない企業がこれからどのように収益を出していくのか、お金の動きが見える書類といってもよいでしょう。
適切な内容が記載された月別収支計画書を提出できれば、融資審査の通過率は各段にアップするとも言われています。
創業計画書と同じく融資審査において重要な書類です。作成に自信がない場合には、税理士などのプロに依頼することも検討してみてください。
「ブラックリストに載る」とは、信用情報機関が管理している信用情報に関する事故情報が保存されている状態のことを言います。
例えば、債務整理を行ったり、長期間支払いなどを延滞したりするとブラックリストに載ります。
過去に何らかの理由でブラックリストに載ってしまった経験がある人は、創業融資に限らず融資全般を受けるのが難しいでしょう。
自分自身がブラックリストに載っているのかどうか調べたい時には、信用情報登録機関に開示請求すれば確認することができます。
融資審査の際にも、申し込み時に金融機関から信用情報登録機関への照会に関する同意を求められます。そのため、ブラックリストに載っている場合は、金融機関にも知られてしまうでしょう。
創業時は、資金面での困難にぶつかることが少なくありません。「もう少し資金があれば、事業を軌道に乗せることができるのに」と苦しい思いを抱えている方もいるでしょう。
創業融資はスタートアップで資金に困る企業の未来に投資する融資です。
融資によって将来的な成長が見込めるのであれば、事業実績がなくても、資本金が少なくても、無担保・無保証人で低金利な融資を検討してもらえます。創業したばかりで融資が受けられず、資金面での困難に直面してしまった時には、創業融資を検討してみるのがよいでしょう。
創業融資を検討する際には、プロの助言を受けながら着実に対策していくのがおすすめです。No.1税理士法人では、財務コンサルタントとして企業のお金に関するお困り事を解決するサービスを提供しています。初めて融資の申込みをする際にも、独自のノウハウから適確に審査の基準となるポイントを押さえたアドバイスを行います。
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