2024/11/20
就業規則とは、労働者や雇用主の間で結ばれる規則を書面化したものです。
双方が安心して就業するために欠かせないもので、条件によっては法律でも作成・届出が義務付けられています。
しかし、起業を検討している人のなかには、就業規則にどのような内容を記載すればいいのか、作成や届出の方法が分からないという人もいるでしょう。
この記事では、就業規則の作り方を紹介します。
合わせて、記載しなければならない項目や作成していない場合の罰則についても詳しく解説します。
ぜひ、参考にしてみてください。
就業規則とは、従業員を雇用するうえで雇用主と労働者の間で定められる取り決めを指します。
簡単に言えば、働く人と雇う人の間で結ばれる約束を示したルールブックとも言えるでしょう。
就業規則は常時10人以上の従業員を使用している場合、作成及び届出を行う義務があります。
労働基準法第89条によって定められているため、該当する経営者は正確に要件を理解しておく必要があります。
事業を続けるなかで就業規則を変えたい場合には、手続きを踏めば変更も可能です。
就業規則について、どのような内容を記載するのか、届出の方法なども把握しておきましょう。
就業規則は、労働者と雇用主が安心して就業できるようにすることを目的として定められます。
事前に就業規則によって、企業のルールを明確化しておくことで就業上のトラブルを防ぐ役割が期待できるでしょう。
就業時間や賃金などに限らず、支払い方法や退職の手続きなど、労働者と雇用主の双方が納得できる就業規則を作成し共通認識を持っておくことで、いざという時に正否を判断するガイドラインとすることができます。
就業規則には、必ず記載すべき事項が定められています。
続いては、絶対的必要記載事項の内容について解説していきます。
絶対的必要記載事項のひとつに始業や就業に関する事項があります。
就業規則には、始業や終業に関する内容の記載が必要です。
始業は何時からで、終業は何時までなのか、その間の休憩時間は何時から何時までなのかなど、詳しく記載します。
1日〇時間、週〇時間など、大雑把な記載方法では絶対的必要記載事項の項目としての要件を満たせません。
休日や休暇に関しても就業規則への記載が求められます。
休日を記載する際に、曜日まで明記することは求められませんが、多くの企業では「毎月の〇曜日を休日とする」など曜日まで明記されていることが多いです。
一般的に就業規則に記載される休暇には以下のものがあります。
年次有給休暇、産前産後休業、母性健康管理の措置、生理休暇、育児・介護休暇、不妊治療休暇、慶弔休暇、病気休暇、裁判員等のための休暇など
全ての休暇を必ず設定しなければならない訳ではありませんが、上記の休暇について定める際には、取得条件、取得可能日数、取得に必要な手続きなども明記する必要があります。
業務上交代制が必要な場合、就業転換に関する内容も明確に記載します。
日番の場合の始業・終業時刻と休憩時間、夜勤の場合の始業・終業時刻と休憩時間など、それぞれのシフトについての始業・終業時刻や休憩時間の記載も必要です。
また、交代勤務についてはシフトを通知する日程や、就業順番なども詳しく記載しましょう。
就業規則には賃金に関する取り決めも明記します。
基本給や手当、割増賃金などの賃金の構成や時間外労働、休日労働、深夜労働などの賃金の計算方法なども詳しく記載します。
合わせて、欠勤時や休暇中の賃金についても計算方法等含めて明確な記載が必要です。
労使間で最もトラブルになりやすい点なので、細かい事まで詳しく記載しておくべきでしょう。
賃金について記載するなかで、締め日や支払い方法などの記載も必要です。
賃金の計算期間や中途採用の際の賃金をどのような計算でいつ支払いするのかなども細かく記載します。
昇給に関して、条件や昇給することで増える給与の計算方法に関しても就業規則に記載します。
昇給を定期的に行う場合は、いつ昇給を行うのか、どのようなケースで昇給を行わないのかなど、明記しておくことでトラブルを回避しやすいでしょう。
就業規則には、退職に関する事項の記載が必要です。
定年の条件や継続雇用の際の条件、手続き方法、退職する際の手続きの時期や方法なども明記します。
合わせて、解雇理由などについても条件を詳しく記載しておく必要があります。
就業規則に必ず記載が必要な絶対的必要記載事項と異なり、会社ごとに規則を定める場合に記載が必要な項目を相対的必要記載事項と言います。
退職の際に退職金を支払う場合、退職金を給付する条件、計算方法、支払い方法、支払い時期などを明記する必要があります。
ボーナスなどの賞与をはじめとした臨時の賃金を支払う場合には、条件や金額、計算方法、支払い方法などについて記載します。
また、事業所独自で定めている最低賃金が最低賃金法で定められた金額と異なる場合には、最低賃金に関する記載が必要です。
事業所独自の最低賃金は、最低賃金法で定められた金額を下回って設定することはできません。
事業所で提供する食事や住居、作業用品などの費用を労働者に請求する場合、就業規則へ詳細を明記する必要があります。
健康診断、ストレスチェック、長時間労働者に対する面接指導、健康管理を行う上での個人情報の管理、安全衛生教育についてなど、安全衛生に関する取り組みを事業所で定める場合は記載が必要です。
また、災害時の補償についても事業所独自で行う場合には記載します。
労働するにあたって、必要な職業訓練を行う場合にも就業規則へ記載します。
職業訓練を行う事や労働者は職業訓練を受けなければならないとする内容の他、関連する通知の時期などについても詳しく記載しておきましょう。
事業所独自で表彰などを行う場合には、その旨も記載が求められます。
また、懲戒を行う際にも、対象者の条件や懲戒処分の詳細などの明記が必要です。
ここまで紹介した相対的必要記載事項の他にも、労働者全員に適用される事項について事業所が設定する場合に記載します。
副業や兼業に関する内容や公益通報者保護についての内容などについても明記されているケースが多くみられます。
ここまで紹介してきた絶対的な必要事項の他に、企業が任意で記載する事項もあります。
一般的に任意の記載事項には以下のようなものがあります。
・企業理念
・就業規則を設定している目的
・人事異動に関する内容
・職務区分に関する内容
・服装規律に関する内容
・守秘義務に関する内容
・ハラスメントに関する内容
・職務上の発明発見の取り扱いに関する内容
従業員が自社について深く理解できるよう、上記のような内容を記載している企業も少なくありません。
就業規則は法律や労働協約に違反しない範囲で作成する必要があります。
労働協約とは、企業と労働組合との間で結ばれる労働条件などの取り決めです。
就業規則が労働基準法や労働協約に抵触している場合、効力が失われる可能性があります。
また、適切な手順を経て作成、届出がされていない場合、効力を失う可能性があるので注意が必要です。
特に、就業規則作成の過程で適切に労働者に内容が周知されていない場合は、効力を発揮しないものとされます。
続いては、就業規則の作成方法について解説します。
作成自体に資格など必要ありませんが、適切な内容になっていなければ労働者から反発を受けたり、周知を怠ると効力が発揮されなかったりするなどトラブルの原因となります。
ある程度の専門的な知識を持つ人のサポートを受けながら作成するのが望ましいでしょう。
就業規則は使用者が常時10人以上の企業で作成を義務付けられています。
厚生労働省が就業規則のモデルケースを公開しているので、参考にして作成するのもよいでしょう。
必要記載事項に漏れがないか確認しつつ作成してください。
作成した就業規則を全ての労働者に周知する必要があります。
周知の際には以下の周知方法のいずれかで行ってください。
常時各作業場の見やすい場所に提示する
書面にして全ての労働者に交付する
磁気テープや磁気ディスクなどにデータとして記録し、各作業場に労働者がこれらのデータを確認できる機器を設置する
全ての労働者に適切に周知されていないと、就業規則は効力を発揮しません。
また、作成した就業規則に労働組合の代表者または労働者の過半数代表者からの意見書を添付する必要があります。
意見書には署名もしくは記名押印が必要なため、記載漏れに注意しましょう。
ここで添付する意見書はあくまで「意見」が記載されているものであり、作成した就業規則に同意する内容が必要な訳ではありません。
作成した就業規則に意見書を添付したものを、所轄の労働基準監督署に届出し、内容に不備がなければ作成が完了します。
就業規則の作成や届出は労働基準法第89条に定められています。
従業員を常時10人以上使用しているにも関わらず、就業規則を作成・届出していない場合、雇用主は30万円以下の罰金刑に処されます。
就業規則の作成や届出をしていない場合、法律違反による罰金刑だけでなく、従業員に訴えられた際の莫大なリスクを抱える事も十分に理解しておく必要があるでしょう。
業務上で何らかのトラブルが発生した場合、基準となる就業規則が作成・届出されていなければ、労働者の要求を呑むか裁判などで争う事になる可能性も少なくありません。
企業の評判やコンプライアンス意識の低さが露呈したり、裁判によって莫大な賠償金を求められてしまうケースもあります。
結果的に法律違反による罰金刑以上の損失を被る可能性もあるでしょう。
また、助成金のなかには申請の際に就業規則の提出を求められるケースがあります。
職業規則を適切に作成・届出していないことで、助成金を受けられなくなることも大きなデメリットのひとつです。
就業規則は、企業と労働者の双方が明確な規則の元で安心して働くために必要不可欠です。
法律で定められている以上に、就業規則を適切に制定していない場合のリスクは高く、事業主は十分に考慮して作成および届出をする必要があるでしょう。
労働者との間でトラブルが起こった際、就業規則をもとに迅速に解決できるよう、専門家の意見を聞きながら作成するのがおすすめです。
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