2024/11/6
会社経営は不変的なものではありません。
時代の流れや会社の業績などによって刻一刻と変化していきます。
会社をより良く経営していくために、内外に対する変化を起こす「組織変更」が必要になることもあります。
この記事では、組織変更の意味や目的、メリットなどを詳しく解説します。
合わせて、外的な組織変更の代表的な例である合同会社から株式会社へ法人形態を変更する際の流れについても紹介しています。
会社経営に携わっている方や現在組織変更を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
組織変更とは会社の内部・外部それぞれに対して行う変化の取り組みを指す言葉です。
会社内部を対象にした組織変更では、新規部署の立ち上げや既存部署の合併・解散などを行います。
会社の経営がより良いものになるよう、社内の組織形態を変更し、効率化や業績の改善効果などを得ることが目的です。
一方、会社外部を対象にした組織変更は、法人の種別を変更することを指します。
合同会社から株式会社、または株式会社から合同会社など、会社の規模や現状、今後の展望に合わせて法人種別の変更が可能です。
会社として必要なタイミングで法人種別を変更することを組織変更といいます。
ちなみに、組織変更は英語で「OrgaizatioChage」と表現されます。
「Orgaizatio」は「組織」を意味し、「Chage」は「変える・変化」という意味です。
組織変更と同じ意味を持つ言葉に「組織改編」がありますが、こちらは主に会社内部に対する施策を指す場合が多いでしょう。
会社経営をしていると、さまざまなビジネス用語を耳にする機会もあります。
組織変更には、似ている言葉も多く存在するためそれぞれの違いを正しく理解しておきましょう。
今回は、意味は組織変更とよく間違えられる言葉の意味を解説します。
組織再編は英語で「Reorgaizatio」と表現します。
組織の形態を根本的な部分から再編成することを指し、組織再編を行う方法のひとつとして合併、買収、会社の分割、株式交換などがあります。
似ている施策にM&Aがありますが、組織再編は会社法によって定義されている点が決定的な違いです。
組織改革は英語で「Orgaizatioal Reform」と表現します。
主に、会社内部に対する変化を指し、組織風土の変更、従業員の意識改革、業務内容の見直し、社内規則の変更など、労働者の行動を変えるため、組織の構造や体制などを変えていくことです。
組織変更を行う目的は大きく5つに分けられます。
続いては、組織変更を行う目的についてみていきましょう。
組織変更を行う目的のひとつに、業績の向上効果を期待するものがあります。
事業を持続的に成長させるためには、適時に組織の在り方を変えていく必要があるでしょう。
内部に対する組織変更では業績の向上効果を目的にし、外部に対する組織変更では事業の拡大などを目的にすることもあります。
会社の経営が下方に向いてしまった場合、立て直しを目的として組織変更を行うこともあります。
会社が危機的状況に陥る前に施策を講じ、持続的な経営が叶うように行われることが多いです。
業績悪化の原因となっている部署への対策として、合併や解散などを行うこともあります。
また、節税対策などを目的に法人格の変更を行うこともあるでしょう。
業績の向上と類似する目的ではありますが、新規の市場に参入する場合も組織変更が行われることが多いです。
新たな事業を開始したり、これまで関わってこなかった市場に参入する場合には、会社内外を新たな市場に適応できる形に変える必要があります。
新規の市場に参入するため、新規部署の設立やそれに伴い不要となる部署の合併・解散を行うこともあります。
また、合同会社として経営している場合、新規の市場への参入に当たって信頼を得るために法人格を株式会社に変更することも珍しくありません。
人的資源は会社にとって代えがたい資産と言えます。
優秀な従業員が経営を支えてくれることで、会社の持続的な成長が期待できるでしょう。
そのためには、従業員の成長を促すことも必要です。
従業員や部門の成長促進を目的とする場合、内部に対する組織変更を行います。
部門の合併、分裂、新規立ち上げなどが行われると、合わせて人員の異動が必要となるでしょう。
人事異動が起こることで従業員の成長が促されたり、適材適所の配置によって部門の作業効率や業績の上昇も期待できます。
生産性の向上を目的として組織変更を行う場合もあります。
主に内部に対する取り組みとして行われ、部署を効率的に整理することで生産性の向上効果が期待できます。
さまざまな目的で行われる組織変更ですが、施策実行を検討するタイミングは主に2つあります。
組織が拡大もしくは縮小した際には、組織変更を検討するのがよいでしょう。
これから事業が拡大していく見込みがあるのであれば、新規部署の立ち上げが必要になる可能性もあります。
また、新規の市場参入に合わせて法人格の変更なども検討する余地があるでしょう。
一方、事業を縮小させる際にも組織変更の検討が必要です。
無駄なコストをカットし生産性を上げるためにも、不要な部署の廃止や効率アップを期待した部署の合併、節税対策としての法人格変更などを行うこともあります。
会社が良い状態に向かっていくときも、悪い状態に向かっていく時も、現状や将来に対してベストな形態を保てるよう社内外に対する変化が必要です。
そこで検討されるものこそ、組織変更と言えます。
会社で働く労働者に直接的な変化を促す組織改革を行った際にも、組織変更を検討するのがよいでしょう。
いくら企業風土の変更や意識改革、業務の見直しなどを行ったとしても環境が変化しなければ、元に戻ってしまう可能性が高いです。
組織改革を成功させるためにも、内部に対する組織変更によって環境の最適化を図るのがよいでしょう。
組織改革に伴って行うのは主に内部に対する組織変更です。
新規部署の立ち上げや合併など、改革の内容に合わせた業務の遂行が可能になるよう組み立てる必要があります。
外的な組織変更として法人格を変更する際、主に合同会社から株式会社、株式会社から合同会社の2パターンに分かれます。
それぞれのメリットについてもみていきましょう。
合同会社として経営している会社を株式会社に変更する際の最大のメリットは、社会的信用が向上することです。
株式会社を設立する際には、資本金を設定する必要があります。
資本金は会社の運転資金の基礎となり、財務上での余力を意味するものです。
つまり、資本金が多く設定されている株式会社は、余力が多く順調な会社と判断してもらえる可能性が高いでしょう。
「余力のある会社=信頼できる」とも言い替えることができ、取引を結びやすかったり銀行などの融資を受けやすかったりするメリットも挙げられます。
一方で、資本金は1円から設定が可能です。
せっかく株式会社に法人格を変更しても、十分な資本金を用意できない場合、株式会社に変更するメリットを享受できない可能性が高いため注意しましょう。
株式会社として経営している会社を合同会社に変更する際のメリットは2つあります。
1つめは、意思決定をスピーディに行えるようになることです。
株式会社の場合、会社の所有者と経営者を別々に置くため、企業としての方針を決める際に合意を得る必要があります。
所有者つまり株式の保持者の合意がなければ、会社としての意思決定ができないということです。
会社としての意思を取りまとめるのに時間がかかってしまい、ビジネスチャンスを逃してしまうこともあるでしょう。
経営が上手くいっていない場合、合同会社に変更して状況に瞬時に対応できるようにしておくというケースも聞かれます。
2つめは、節税効果が高い事です。
株式会社と合同会社では経営維持のために必要な税金に差がでます。
法人税率などは同じですが、株式会社の場合役員登記の費用が必要で、役員を変更する際には登録免許税も必要です。
また、株式会社の役員は任期が決まっているため、任期の更新や新規役員の配置などランニングコストが発生します。
株式会社を合同会社に変更することで、節税対策ができるのも重要なメリットです。
会社の法人格を変更する際に、特に多いのが合同会社から株式会社への変更です。
続いては、合同会社から株式会社に組織変更する時の手続きの流れについて紹介します。
合同会社から株式会社に法人格を変更する際には、組織計画変更書の提出が求められます。
組織計画変更書に記載する主な内容は以下のとおりです。
・変更後の事業目的
・変更後の商号
・変更後の本店所在地
・発行可能な株式総数
・変更後の会社の定款に記載する事項
・株式会社の取締役として就任する人物の氏名
・株式会社の役員(会計参与、監査、会計監査など)に就任する人物の氏名
・社員が取得する株式数と算定方法
・株式の割り当てに関する事項
・効力の発生日
上記内容以外にも、組織変更に際して従業員に対して金銭等を交付する場合、内容や割り当てに関する事項も記載する必要があります。
また本店所在地の住所や出資者(株主)に関しては、合同会社の時と同様の内容でないといけないなどの決まりもあるため注意しましょう。
事業目的に関しては、合同会社の時と大きく変更していても構いません。
今後の展望や成長を見据えた内容を記載するのがポイントです。
組織計画変更書の作成をしたら、現在雇用している全ての社員に内容に対する同意を得る必要があります。
組織計画変更書に記載した効力発生日までに、全ての社員の同意を得る必要があるため、雇用している従業員が多い場合は迅速な対応が必要です。
債権とは借金の返済や約束が守られることを求める権利で、債務とは借金を返済し約束を守る義務のことです。
合同会社の債権者は組織変更に不満がある場合、債務者となる経営者に対して、意義を申し立てることができます。
また経営者は組織変更にあたり、債権者へ以下の催告を行うことが義務づけられています。
・組織変更を行う旨
・債権者が組織変更に対して異議申し立てできる権利を持っている旨
債権者が組織変更に対して異議申し立てできる期間は、経営者が決定します。
ただし、期間は最低1ヶ月以上設定しなければいけません。
また、経営者は組織変更の旨を官報へ公告することが義務付けられています。
基本的には官報に公告し債権者への個別催告が必要ですが、電子公告を行った際には個別催告は不要です。
定めた期間内に債権者からの異議申し立てがなく全社員の同意が得られた場合、組織計画変更書に定めた効力発生日をもって合同会社から株式会社へと変更されます。
効力発生日から2週間以内に、所轄の法務局で登記申請を行いましょう。
この時、合同会社の解散登記と株式会社の設立登記を同時に行います。
正しく手続きがされている場合、法務局からは特に何の連絡もありません。
手続きに問題があった場合のみ、法人格の変更が正常に行われていない旨を通知されるため、速やかに対応しましょう。
合同会社から株式会社に組織変更する場合の費用の最低額は約9万5,000円と言われています。
資本金は含まれていません。
組織変更にかかる費用の内訳としては、登録免許税6万円と官報の公告費用3万5,000円が挙げられます。
登録免許税に関しては、既存会社の規模によっても変動するので注意してください。
合同会社を株式会社に変更する場合、一度合同会社を解散して株式会社を新規設立する方法もあります。
しかし、手続きが複雑なうえ費用も多くかかるため、組織変更によって法人格を変更した方がコストを抑えられるでしょう。
組織変更にかかる期間はおおよそ2カ月を目安にすると良いでしょう。
債権者への催告期間で最低でも1ヶ月間を要するため、どれだけスピーディに対応しても1ヶ月以上は必ずかかります。
また、債権者より異議申し立てがあった場合、同意を得られるまで組織変更はできません。
組織計画変更書などを、通常業務と同時進行で作成したりするとさらに時間がかかるでしょう。
全社員の同意を得るなど、作業しなければいけない事柄も多いため、経営者自らが対応した場合時間がかかってしまうケースがほとんどです。
組織変更は会社の今後を左右する大きなポイントです。
だからこそ、明確な目的をもって適切なタイミングで行うことが重視されています。
会社をより成長させる目的や企業を縮小させて危機を乗り越える目的など、さまざまな状況で組織変更を検討するタイミングがあるでしょう。
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