2021/12/15
株式会社といえば、複数人の取締役を置き、取締役会を設置しなければなりません。
そのため設立時には、複数人の発起人が必要なのでは、と思う人もいるでしょう。
ですが、これは以前の話で、現在はこの要件が変わっています。
株式会社設立に必要な人数を始め、株式会社設立にまつわる事項について解説します。
会社の設立や運営、仕組みといったものを所管する法律として「会社法」があります。
平成18年、つまり2006年に施行された法律で、それ以前に複数あった会社に関する法律をまとめたものです。
この会社法施行により、従来の株式会社の設立要件は大きく変更されています。
株式会社設立要件は、従来であれば最低3人以上の取締役と1人以上の監査役が必要でした。
そのため会社設立には、最低限3人必要だったのです。
ですが現行の会社法では、会社設立に必要な発起人の数についてのルールがありません。
つまり、発起人は1人でも良いことになったのです。
従来は3人以上の取締役と取締役会の設置が必要でしたが、会社法施行後は取締役会の設置も必須ではなくなりました。
つまり、1人で株式会社を設立してその状態のまま株式会社を運営し続けることも可能となったのです。
この会社法施行時に話題となったのは、資本金についての要件も緩和された点です。
従来は、株式会社の設立には最低1,000万円が必要でしたが、資本金1円でも設立が可能となりました。
資本金1円で、1人だけで設立した株式会社が数多く設立されるようになりました。
1人で事業を営むのであれば、何も株式会社を設立しなくても、個人事業主として事業を営むことも可能です。
ですが、1人でも株式会社を設立することには、さまざまなメリットがあります。
これは個人事業主でも同じですが、事業を2人以上で営む場合には、意思決定するために話し合いを実施しなければならず、スピーディーに事が進まない場合があります。
ですが1人なら自分1人で意思決定が可能です。
自分の意思だけで事業が進められるため、さまざまな決定事項にスピード感が出ます。
事業運営時に関わらず、会社発足時にも発起人が話し合って全員の意見をまとめなければならない事項も、1人の意見で決定できます。
株式会社の役員は、法務局で登記しなければなりません。
もし取締役の交代などが必要となった場合には、その都度登記が必要となります。
登記の際には「登録免許税」の支払いが必要です。
1人で設立すれば、自分以外に役員を置く必要がありません。
そのため、登録免許税の支払いも最低限度で済むでしょう。
役員に対して支払う役員報酬も、自分の分だけで良いのです。
役員報酬も登記に必要な登録免許税も固定費として必要なコストですが、これらが最小限で済みます。
また新たに従業員を採用しないのであれば、採用コストもかかりません。
従業員を雇用することで必要となる、さまざまな費用も抑えられるでしょう。
個人事業主ではなく、あえて株式会社を設立することで、法人格が得られます。
法人格を得ることで、社会的信用度が高まったり節税効果が得られたりするなど、個人事業主では得られないメリットがあります。
株式会社として登記するときには費用が発生しますが、費用をかけても得られるメリットが多いのです。
1人で株式会社を設立することには、メリットだけではなくデメリットもあります。
もし次のようなことが、メリットより大きいと感じるときには、1人で株式会社を設立するのは避けた方が良いでしょう。
個人事業主に比べると、株式会社を設立するために必要となる費用や手続きなどができた点で社会的信用度は高くなります。
ですが、複数人の従業員を抱える会社に比べると、どうしても信用度は低めになります。
1人株式会社だと、役員や従業員に支払う報酬や給与が不要な分、売上に対する利益率が高くなるメリットがあります。
ですが、どうしても1人でできる作業には限界があります。
そのため、売上にも限界が出てきます。
会社の規模が一定以上に達した場合には、1人だけで経営することがデメリットに働くことが出てきます。
自分の意思だけで、さまざまな事項が決定できる反面、相談できる相手がいないのが1人株式会社です。
経営が順調であれば良いですが、経営が傾いた場合でも、どこで傾いたのか、どう改善すれば良いのかを、全て自分で考えなければなりません。
経営に誤りがあることを指摘してくれる人がいれば、それ以上大きく傾くことが避けられたかもしれません。
個人事業主の場合には、事業で得た利益は、全て自分の収入に直結します。
ですが株式会社では、事業で得た利益はあくまでも会社の利益で、自分の収入には直結しません。
会社で定めた役員報酬を、毎月定期的に受け取るだけです。
混同しないよう、注意しなければなりません。
株式会社は1人でも、出資金1円からでも設立可能です。
1人株式会社には、メリットもデメリットもあります。
デメリットの多くは、社外に対等な関係性で相談にのってくれるパートナーがいると解決できるかもしれません。
1人オーナー社長にとって、税理士は最も身近なパートナーです。
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