2020/8/7
後継者不足、あるいは業種の需要の減少、経営状況の悪化などから、会社の廃業を考えている経営者の方は少なくありません。
しかし、実際に会社を廃業するとなると、お金の面で悩んでしまう方も少なくないでしょう。
ここでは、会社の廃業をするのに費用がいくらくらいかかるのか、また、資産や退職金はどのようになるのかをご説明いたします。
会社を廃業するには、いくつかの手続きを行う必要があります。
それらの手続きは手間がかかるだけでなく、費用もかかるということを念頭に置いておくべきです。
まずは手続きの内容と、費用の相場を一覧で見てみましょう。
解散登記の登録免許税 | 3万円 |
清算人の選任登記の登録免許税 | 9,000円 |
清算結了の登記 | 2,000円 |
官報公告 | 3万3,000円 |
弁護士費用(報酬) | 5~10万円 |
その他(設備処分、現状回復にかかる費用) | ケースによる |
会社廃業手続きは法的な知識を要するため、煩わしさを避けるために法律事務所に相談する方は非常に多いです。
弁護士費用を含めると、最低でも12万4,000円かかると考えておきましょう。
そのほか、オフィスや店舗を構える会社の場合、設備の処分や建物の原状回復などに多額の費用がかかることがあります。
有名メーカーやブランドの家具や機器であれば、リユース品として需要があるため売却することも可能ですが、そうでない場合は有料で業者に処分してもらわなければなりません。
店舗の在庫が存在する場合、原価割れで販売することになるか、あるいは処分しなければならないため、何千万単位で費用が発生するケースもあります。
また、物件を借りていた場合の原状回復費用に関しては、部屋の規模によりますが、1坪あたり7~10万円を目安にしてください。
会社廃業の手続きを行った後、残った会社の資産はどうなるのでしょうか。
会社を廃業する際には、資産や負債をゼロにする必要があります。
財産があったとしても、勝手に処分してはならず、法律に基づいて財産整理=清算しなければなりません。
会社廃業の手続きは「解散」と「清算」の2段階に分けることができますが、解散の段階で行う株主総会の中で、財産整理の手続きを担当する者=清算人を選出することになります。
会社の代表者が清算人になるのが一般的です。
そして、解散日から2週間以内に、法務局にて清算人選任登記を行います。
解散及び清算人選任登記申請書は法務局のホームページよりダウンロード可能です。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#anchor5-1-4
解散の際に決算書を作成するのですが、この時、負債が資産を上回った状態(債務超過)になると、廃業することができません。
赤字経営により会社を廃業した場合には、借金が残ってしまうケースも多くみられます。
まずは負債の返済のため、売掛金の回収や固定資産の売却を行い、資産を現金化します。
それでも借金が残った場合は、裁判所の監督下で自己破産あるいは特別清算などの手続きを行います。
会社の解散後、債務を弁済した後に残った財産のことを「残余財産」と言います。
残余財産は会社に出資している株主に分配されるものです。
残余財産の分配については、株主総会で清算人の決定が行われる時に、残余財産の種類及び株主に対する割り当てに関する事項なども併せて決定します。
会社法にある「株主平等の原則」に基づき、各株主が保有する株の数に伴って平等に分配する必要があります。
ただし、内容の相違する2種類以上の種類株式を発行している場合は例外です。残余財産の分配を受ける権利がない、種類ごとに割り当てが異なるという条件がある場合、株式の内容に応じて分配額が決まります。
清算手続きが終了したら、決算報告書を作成、株主総会の承認を受けます。
さらにその2週間以内に、法務局にて決算決了の登記を行ってください。登記完了で財産整理は完了です。
経営状況が悪化したことを理由に会社廃業する場合、社員や従業員と退職金の支払いを巡りトラブルに発展するケースは非常に多いです。
実際のところ、廃業の際、会社は社員や従業員に退職金を支払わなければならないのでしょうか。
結論から言うと、就業規則や雇用契約、労働契約において退職金制度を設けている会社であれば、廃業する会社でも退職金を支払う義務が生じます。
逆に言えば、法的に支払い義務が生じるものではないため、制度が設けられていない会社であれば退職金を支払う必要はないのです。
会社廃業の際は、社員との雇用契約を解消=解雇しなければなりません。
その際に給与の補償として「解雇予告手当」を支払うのが一般的です。
計算方法は以下の通りです。
【1日の平均賃金×解雇日までの期間が30日に不足していた日数】
なお、解雇予告手当は退職金とは別の扱いになるので注意しましょう。
退職金に関しては、通常、労働条件通知書あるいは就業規則に記載されています。
記載内容に従って社員に支払う必要があります。
退職金には非課税の枠があるため、高額になるケースがあることを頭に置いておきましょう。
参考文献:国税庁「退職金と税」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm
今回は会社の廃業をするのにかかる費用についてご説明しました。
廃業の際には、廃業手続き自体に必要な費用だけでなく、財産整理や退職金についても考えなければならないのです。
もしかすると、廃業以外に選ぶべき選択肢があるかもしれません。
最良の結果を生むためにも、法律や会社廃業に専門的な見識をもつ専門家に相談するのが望ましいでしょう。