2020/6/23
昨今の経済不況により経済状況が悪化し、会社の廃業を考えている方も少なくないでしょう。また、少子高齢化の影響で後継者不足が起こり、会社を廃業するケースもみられます。
ここでは、会社を廃業する際に知っておきたい手続きの流れや費用、従業員へのお知らせについて解説していきます。
会社を廃業するには、起業するよりも複雑な手続きを必要とします。
従業員や取引先への通知、株主総会での解散決議など、すべきことも多いので、流れを確認しておきましょう。
会社廃業の具体的な手続きに入る前に、まずは従業員や取引先に廃業のお知らせをしなければなりません。「廃業挨拶状」と呼ばれる書面を送付しましょう。
突然廃業するとなると、従業員の生活や取引先にも打撃を与えてしまいかねません。
廃業を決定したら、なるべく早く通知する必要があります。最低でも廃業する2~3ヵ月前には通知すべきです。
以下が廃業挨拶文の例です。
拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます
さて 弊社は設立以来〇〇年にわたり皆様のご厚情を賜り今日まで存続してまいりましたが、△月×日をもちまして廃業いたすことになりました
皆様からのご厚誼に心から感謝申し上げるとともに、今後ますますのご健勝をお祈り申し上げます
まずは略儀ながら書中をもって廃業のご挨拶を申し上げます
敬具
令和〇〇年〇月
株式会社□□ 代表取締役~~~~
会社の解散など重要事項の決議は、会社法に則り「株主総会」にておこなう必要があります。
株主総会はいわば最高意思決定機関です。自主廃業の場合、株主総会に発行済み株式数の株主が出席し、なおかつ3分の2以上の同意を得なければなりません。
書面決議の場合は株主全員の賛成が必要です。
清算人の選任も株主総会でおこなわれますが、一般的には代表取締役が清算人になります。
解散決議のあと、会社廃業および清算人選任の旨を登記します。廃業日から2週間以内に、法務局にて「解散登記」と「清算人選任登記」をおこなってください。
申請書は法務局のホームページからダウンロード可能です。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html
商号や本店住所、登記の事由などを記載して提出します。
会社を廃業する際には税金や保険関係の届出も必要になります。会社に課せられている法人税、住民税、事業税に関して、税務上の解散の届出「異動届出書」を提出しなければなりません。異動届出書は税務署や都道府県税事務所、市区町村の役所(東京23区は不要)に提出します。
また、税務署では「給与支払事務所等廃止届」も提出してください。
雇用保険はハローワーク、社会保険は年金事務所や被保険者の管轄の協会けんぽ、労働保険は労働基準監督署に届出が必要です。
建設業や旅館業、宅地建物取引業など許認可が要る業種は、各行政機関への廃業手続きが必要なので注意してください。
会社を廃業する際に借金がある場合、貸主(債権者)にはお金を返してもらう権利があります。
その保証として、債権者に債権を申し出るよう、官報に「解散公告」を2ヵ月以上掲載することが会社法で定められています。
会社の廃業では2回決算書類の作成が必要です。はじめに解散時の決算書類を作成します。財産目録および貸借対照表については、株主総会による承認が必要です。
次に、決算手続きとして、残った財産や債務の整理をおこないます。
やるべきことは3段階に分けられます。
1. 財産の売却や売上債権の回収などにより、帳簿上の資産を現金化する
2. 現金を用いて借金を返済する
3. 資産がマイナスになった場合、廃業できないため破産手続きをおこなう/財産が残った場合は株主の間で分配をおこなう
決算書類が作成できたら、事業開始日から廃業日までの解散確定申告をおこないます。解散確定申告は廃業日から2ヵ月以内という期限があるので注意が必要です。
株主総会で決算報告書が承認されたら、2週間以内に法務局にて「清算結了登記」をします。
これをもってようやく法人登記記録が消滅します。
また、残余財産確定日(債務弁済の完了日)から1ヵ月以内に、該当事業年度の清算確定申告をおこなってください。
最後に、税務署に「清算結了届」を提出して会社廃業の手続きは完了となります。
清算結了届は各都道府県のホームページからダウンロード可能です。
廃業手続きにはさまざまな費用が必要になるため、事前にいくらくらいかかるか知っておきたいという方は多いでしょう。
結論からいうと、会社廃業には40,000~100,000円の費用がかかります。会社を廃業するにはまとまったお金が必要ですので、準備しておく必要があるでしょう。
具体的な内訳をみていきましょう。
まずは登記にかかる費用です。
内容 | 費用 |
解散登記の登録免許税 | 30,000円 |
清算人選任登記の登録免許税 | 9,000円 |
清算結了登記 | 2,000円 |
そのほか、書類の作成や官報公告にもお金がかかります。
内容 | 費用 |
登記簿謄本(2通) | 1,200円 |
印鑑証明書 | 450円 |
官報公告料 | 32,000円 |
意外に多くの費用を占めるのが設備等の処分料だといいます。
会社の規模が大きければ大きいほど費用も高額になると考えておくべきです。さらに、弁護士や司法書士に相談した場合は報酬費用などがかかります。
とはいえ、会社の廃業は手間がかかり、費用も高額になるため、本当に廃業を選択すべきかどうか再度確認したほうがよいといえます。
廃業以外のベストな選択肢を知るためにも、素人判断はせずに弁護士などに相談するのが望ましいでしょう。