2020/2/10
新しく事業を始めたいとき、「会社を設立する」あるいは「個人事業主になる」という2つの選択肢が挙がります。
会社設立と聞くと少々大掛かりなイメージがありますが、2006年に会社法が改正されたことによって、資本金がたとえ1円であっても会社設立ができるようになりました。
とは言え、会社設立に向いているケースとそうでないケースがあるため、この記事を参考に自分に適した起業方法を選んでいきましょう。
会社設立の最大のメリットとされるのが、消費税の免除や節税効果です。
しかしながら、そのメリットを得るためにはある一定の条件が必要になります。
個人事業主の場合、「超過累進税率」が適用されるため、収入の増加に比例して税率が高くなります。
個人事業主が支払う税金は、所得税、住民税、消費税、個人事業税の4種類です。
このうち、利益に対して課されるのが所得税と住民税になります。
所得金額が195万円以下の場合の所得税率は5%ですが、195万円を超えると利益に応じて10%、20%と増加していき、所得が4,000万円以上になると、最高税率の45%を納めなくてはなりません。
それに加え、住民税10%が課されます。
一方、法人の場合は、利益にかかる法人税の税率がほぼ一定です。
個人事業主よりも納める税金が少なく済む可能性があります。
所得が800万円以上の法人でも最高税率は約24%です。
800万円以下の中小企業であれば、法人税は約15%となっています。
従って、所得が多くなれば多くなるほど会社設立による節税のメリットは大きくなるのです。
以上のことを踏まえ、個人事業主が会社設立をするのに適した年間利益は、およそ500万円以上と考えられています。
個人事業主でも法人でも、創業から2期(2年間)は消費税が免除されます。
ただし法人の場合、資本金が1,000万円以上の場合や、1期の前半に売上もしくは給与等の金額が1,000万円を超えた場合、2期前に売上が1,000万円を超えた場合は消費税の課税対象となります。
そのため、個人事業主としての創業から2期を迎える前に会社設立をすれば、最大4年間消費税を免除することが可能です。
会社設立時の資本金には資本準備金(株主からの払い込み金額のうち資本金に組み入れなかった資金)は含まれません。
会社法第445条において、払い込み金額のうち1/2までは資本準備金とすることができます。
そのため自己資金が1,000万円以上の場合は、超過分を資本準備金に勘定し、課税対策をしておきましょう。
サラリーマン等は給与から一定額が差し引かれた金額に所得税が課せられる「給与所得控除」を受けることができます。
一方、個人事業主は売上から経費を差し引いた金額に所得税が課せられます。
法人の場合は役員報酬という名目で会社から給与をもらうことになるため、給与所得控除を受けることが可能です。
さらに、役員報酬から経費を差し引くこともできるため、所得税を抑えることができます。
また、法人であれば「欠損金の繰越控除」が適用されます。
これは、年間利益が赤字になった場合、損失額を翌年度からの所得と相殺することができる制度です。
青色申告を行っている個人事業主の場合は、3年間赤字を繰り越すことができますが、法人の場合は9年間も繰り越すことができます。
将来的に黒字化が期待できるのであれば、会社設立することで節税効果を得ることは十分可能でしょう。
個人事業主が会社設立するメリットはほかにもあります。
あなたが取引先を選ぶとき、個人と株式会社どちらがより信用できるでしょうか。
恐らく大半の方が後者を選択することでしょう。
「個人事業主よりも法人の方が信用度の高さが勝る」と、必ずしも言い切れません。
しかし、会社設立時には法務局で登記申請を行う必要があるため、実績や能力等に大差がなければ、法人の方が圧倒的に有利になるのは事実です。
社会的信頼を得ることでクライアントや仕事の幅が広がり、売上増加につながる可能性もあります。
また、金融機関からの融資や資金調達においてもやはり法人の方が容易です。
個人事業主は会社に比べると融資条件が厳しく、連帯保証人を立てなければならないケースも珍しくありません。
法人の方が確定申告で経費として計上できる項目が多くなります。
個人事業主の場合、以下のものが経費として計上可能です。
・消耗品代
・旅費交通費
・接待交際費
・水道料金
・光熱費
・通信費
法人の場合、個人事業主で計上できる経費に加え、以下の出費が経費として計上できます。
・本人、家族や親族への給与
・退職金
・生命保険料
・家賃
個人事業主になるか会社設立するか、どちらがベストな選択肢なのかは事業内容や本人の意思によって異なります。
一つ言えることは、今後ビジネスを広く展開していきたいと考えているのであれば、法人として事業を立ち上げた方が有利になることが多いです。
費用の計算等どうしても解決できない問題がある場合は、専門家に相談してみると良いでしょう。