2019/10/25
お店で領収書をもらう時、宛名に「上様」と書いてもらうことがありますよね。
会社側からの指示でそうする場合もあれば、お店側から「上様でよろしいですか?」と聞かれたこともあるでしょう。
反対に、上様ではダメと言われることもあります。
この「上様」とは、一体何を意味する言葉なのでしょうか。
また、領収書の宛名が会社名でなければならない理由や、正しい書き方についても説明します。
「上様」は領収書の宛名に書かれるものですが、意外と読み方や意味を知らずに使っている方は多いのではありませんか?
新社会人の方はもちろん、今さら聞けないとお困りの方は、上様とは何かを知っておきましょう。
領収書に上様と書かれるようになった由来には諸説ありますが、主に2つの意味があるとされています。
1つは、相手の名前をそのまま呼ぶことを避けるためというもの。
古くは江戸幕府で将軍が尊敬の意味を込めて上様と呼ばれていたように、お客様にも上様を使うようになったという説が有力です。
2つめは、上得意の客を意味する「上客」を略したという説です。
上様の読み方は「うえさま」が一般的ですが、「じょうさま」と呼んでも間違いではありません。
領収書の宛名は「上様ではダメ」とは言い切れませんが、税務調査をクリアできないことがあります。
ここでは、上様ではなく会社名を書かなければいけない理由についてご説明します。
本来、領収書の宛名には会社名を記載しなければなりません。
上様は「あなた」と同じ代名詞のようなものですから、不特定多数に当てはまってしまいます。
ですから、あくまでも会社名の代わりと考えておくべきです。
急いでいる時やレジが混雑している時などは、上様で発行してもらうこともあるでしょう。
しかし、領収書としての効力は具体的に宛名が書かれたものに比べてやや劣ります。
領収書の上様が必ずしもダメというわけではありませんが、税務調査でマイナスの印象を与える可能性は否定できません。
そのため、領収書の宛名は上様ではなく会社名を入れることが望ましいです。
同様の理由から、但し書きによく記載される「品代」もあまり好ましくありません。
消費税法第30条9項1号では、領収書に必要となる5つの項目が定められています。
・発行者
・取引日時
・取引内容
・金額
・書類の受取人
この中で書類の受取人が宛名に該当しますから、本来は宛名の記載がなければ正式な領収書として認めてもらえません。
しかしながら、例外として5つの事業においては書類の受取人の記載は要件として省かれています。
・小売業
・バス、鉄道、航空会社などの旅客運送業
・旅行に関する事業
・飲食業
・駐車場業
このように、日常生活で発生する少額の取引であれば、上様領収書やレシートでも経費の証拠書類として提出できます。
とは言え、会社の規定が第一優先となりますから、宛名がない領収書の場合社内ルールで経費として認められないケースもあります。
これまでご説明してきた通り、領収書の宛名に上様と書くのは極力避けた方が良いです。
ここからは宛名の正しい書き方や訂正したい時の対処法をご説明します。
会社や取引先に提出する領収書の宛名には、企業の正式名称を記載するのがマナーとされています。
例えば「株式会社〇〇」「〇〇株式会社」などを「〇〇(株)」と省略することはやめましょう。
社名の最後に御中を書き足すことも忘れないでください。
経理担当者が明らかな場合は、所属部門や氏名も記載します。
個人事業主の場合、宛名は個人名で問題ないですが、屋号がある場合は個人名の前に記載すると良いです。
店側に領収書の発行を依頼する際は、会社名や氏名が記入してある名刺を渡しておけば誤記のリスクが少なくなるでしょう。
自身が書類の受取人になっている場合、もらった領収書の宛名に誤りがあったり記入もれがあったりすることがあるかもしれません。
そんな時、領収書を自分で訂正することはやめてください。税務調査で不正を疑われてしまう可能性があるからです。
発行者による宛名の誤記がある旨を、メモ書きで領収書に沿えておくのがベターです。
ほかの項目についても同様のことが言えます。
また、自身が領収書を発行する際に書き間違えてしまうこともあるでしょう。
その場合、訂正したい箇所に二重線を引いて上部に正しい文字を書き、訂正印を押すのが正しい方法です。
修正ペンや修正テープで消すことは認められません。
領収書の宛名で気軽に使ってしまいがちな上様ですが、正式な書類としては好ましくないことがお分かりいただけたと思います。
特に、金額が大きいものは税務調査も厳しくなりますから、宛名には必ず会社の正式名称を記載するようにしましょう。